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12月24日のまにら新聞から

特権の誤用やめよ

[ 706字|2007.12.24|社会 (society)|新聞論調 ]

元下院議員の釈放問題

 十一歳の少女をレイプした罪で禁固刑判決を受けたハロスホス元下院議員が釈放される、との情報が飛び交った。少女の元弁護人は「被害者は(釈放報道を)信じられず、非常に動転している」という抗議の電子メールを社会福祉開発省へ送ったが、残念ながらこれが比の現状なのだ。

 われわれは今年一月、米兵がレイプ罪に問われた裁判で、在比米国大使館での米兵拘置を容認したアロヨ現政権の対応を「法の支配を冒とくする行為」と非難した。

 しかし、その後も現政権による「法の支配に対する冒とく」はやんでいない。「国家財産の略奪者」であるエストラダ前大統領に大統領特赦が与えられ、アキノ元上院議員殺害で「歴史を転換させた暗殺者」となった元国軍兵士も特赦で自由の身となった。

 そして今回は、大統領の政治的盟友として知られるハロスホス元議員。「元議員釈放へ」との報道を受けて、エルミタ官房長官は慌てて①恩赦委員会から釈放に関する書面は届いていない②元議員は特赦対象の七十歳に達していない︱︱などと説明、報道を否定した。しかし、今年に入って元議員の刑期が終身刑(最高で禁固四十年)二回から十六年に短縮された経緯から推察すると、現政権は「クリスマス前後の元議員釈放」を実現するため、着々と準備を重ねてきたと思われる。

 われわれは特赦に関する大統領特権の是非、善悪を論じようとしているのではない。重要なのは、大統領特権は法を犯すためではなく、時に不可避な「司法の過ち」を正すために与えられているということだ。法律至上主義を維持するために与えられた特権を薄汚い政治で汚してはならない。(17日・インクワイアラー)

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