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9月18日のまにら新聞から

閉鎖後の個人採掘者が被災 台風後も40人なお土砂の下

大規模な土砂崩れが15日に発生したイトゴン町では、捜索活動続く

[ 1163字|2018.9.18|気象・災害 ]
一部形が残る宿舎付近を捜索する警察官ら=17日午前10時半ごろ、ベンゲット州イトゴン町ブカウで森永亨撮影

 台風オンポンにより15日に大規模な土砂崩れが起きたルソン地方北部ベンゲット州イトゴン町の金鉱山宿舎付近では、17日午前6時から捜索活動が再開された。宿舎3棟が埋まり、17日夕までに11人が遺体で見つかった。依然40人以上が土砂の下に残されているとみられる。

 現場には国家警察や国軍、近隣住民ら300人以上がスコップやチェーンソーを手に集まり必死の救出作業を続けた。近くの遺体収容所では犠牲者の妻らがすすり泣いていた。

 宿舎があった地点は遺体収容所から、ぬかるむ山道を下った所にあった。両脇に生い茂るハンノキや竹の隙間から少しずつ斜面が見え、チェーンソーの音が聞こえてきた。

 たどり着いた現場では稜線から茶色い土砂が、大きくカーブを描きながら崩れ落ちていた。青いTシャツを着た警官や近隣住民、鉱山を所有するベンゲット社の社員らが土砂をかきわけていた。

 休暇を取っていて難を逃れた鉱山労働者の男性(34)は「いつかはこういうことが起きるのではと実は思っていた。私も危険を承知で採掘をしてきた」とこわばった表情で明かした。

 金鉱山は金精錬の際に使う水銀による環境汚染などが問題視され、ベンゲット社は既に鉱山を閉鎖していた。しかし、周辺住民は個人で手堀りを続けていた。

 「うまく金が見つかると1日1000ペソの収入になることもある」と関係者は話す。ベンゲット州を含むコルディエラ地域の最低賃金は1日320ペソで、危険を冒しても金採掘の魅力は大きかった。

 イトゴン町では住民の6割が鉱業に従事、他には農業のほか目立った産業はない。

 自身もかつて鉱山労働者だった町議のアルネル・バヒガワン氏は「台風前に避難勧告を出していたのだが‥」と無念そうに現場を見守っていた。ただ、2009年にここで起きた坑道崩落事故の際は「13日間坑道の中で生きていた例もあり、希望を失いたくない」とも語った。

 同氏によると、ベンゲット社は1930年代にここで金鉱山の操業を開始したが、政府の許認可更新が得られず90年代に閉鎖した。しかし、住民個人による採掘は続いていた。

 鉱山問題に詳しい非政府組織(NGO)「コーディリエラ・グリーンネットワーク」の反町真理子顧問(56)は「坑道を多く掘る鉱山開発は環境負荷が大きく、大雨のたびに過去にも事故はたびたび起きてきたが、炭鉱を所有する企業は責任を感じておらず、行政も管理できていなかった」と指摘する。

 ベンゲット州は5年ほど前に個人採掘労働者に協会を創設し加入を促したが、事故防止には十分機能していなかった。土砂で埋まった宿舎はうち一つを協会が所有していた。反町顧問は「採掘は手っ取り早く誰にでもでき、それしか生きるすべがない現実もある」とも話した。(イトゴン=森永亨)

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