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7月14日のまにら新聞から

楽器寄贈

[ 1380字|2014.7.14|気象 災害 (nature) ]

日本のミュージシャンら、台風ヨランダ被災校のマーチングバンドに楽器を寄贈

残った楽器で行進曲を披露するパロ国立高校のマーチングバンド=今泉光司さん提供

 台風ヨランダ(30号)の被災地、ビサヤ地方レイテ州の高校と小学校の6校にあるマーチングバンドにこのほど、日本のジャズミュージシャンや映画監督が楽器を寄贈した。

 青空の下、軽快な行進曲がパロの町に響き渡った。雨期が遅いレイテ州は7月に入っても蒸し暑く、日差しがまぶしかった。8日朝、パロ国立高校に楽器を寄贈するために訪れた今泉光司さん(54)=東京都台東区浅草出身=を迎えたのは、ドラムや手持ち式鉄琴など残された楽器を集めて演奏するマーチングバンドの生徒たち。

 同校のマーチングバンドはメンバー全員が無事だったが、楽器の多くは激しい風と高潮によって失われてしまった。演奏を聞いて、今泉さんは「感動しました」と話した。

 7、8両日に同州を訪れた今泉さんは、ルソン地方バギオ市在住の映画監督。特定非営利活動法人(NPO)サルボンを立ち上げ、市内の学校での上映会や山岳民族への支援などを行っている。台風ヨランダ直後の11月半ばにはレイテ島を訪問し、悲惨な状況を目の当たりにした。

 今回の寄贈のきっかけは、台風ヨランダ発生直後に知人のジャズミュージシャン、梅津和時さんから届いた連絡だった。「被災者のために何かしたい」。梅津さんは宮城県仙台市出身で、ヨランダの被災の状況が、2011年に発生した東日本大震災の被害と重なって目に写ったという。

 今泉さんは梅津さんの思いを胸に、3月に再び被災地を訪問。被災した各地の学校のマーチングバンドが、楽器を失ったために学校や自治体の行事で演奏できず困っていることを知った。梅津さんからも音楽に関する援助をしたいとの希望があり、楽器の寄贈を決めた。

 寄贈に向け、梅津さんは4〜6月にかけて山梨、東京、広島各地でチャリティーコンサートを開催。被災直後のレイテ島を撮影した今泉さんのドキュメンタリー映画も上映された。集まった寄付金は84万2千円に上った。

 楽器が寄贈された学校は、特に被害が大きかったレイテ州パロ、タナワン両町とタクロバン市サンホセのそれぞれの国立高校と中央小学校の計6校。事前にそれぞれの学校で希望する楽器を聞き取り、ドラムやギター、鉄琴などを届けた。

 今泉さんによると、サンホセの国立高校では特に被害が大きかった。もともとあった楽器はすべて流され、マーチングバンドの生徒も5人が犠牲になった。被災前は市のコンクールで入賞する優秀なバンドだったという。寄贈したどの学校でも、新しい楽器を箱から取り出した時は、生徒たちも教師も「とても喜んでくれました」と今泉さん。

 パロ国立高校では、マーチングバンドの演奏のほか、日本語の歌や踊りで今泉さんを迎えた。「3カ月かけて寄付金を集めたことに先生がいたく感激してくださったようで、生徒たちに何度も説明していました」。

 梅津さんは、9月にも大阪と滋賀でチャリティーコンサートを開く予定。また、同月末にはフィリピンを訪問し、首都圏マカティ市でもチャリティーコンサートを企画している。

 今泉さんは「ほかの学校にも寄贈できるよう、もう少し続けていかないといけない。寄贈を通して比日のつながりを深め、交流していきたいです」と思いを打ち明けた。被災地の復興が進む中、子供達の演奏する楽器が明るい希望を運んでくることを望んでいるという。(加藤昌平)

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