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6月30日のまにら新聞から

「台湾の次は比が標的に」 比台防衛協力に期待表明

[ 1409字|2023.6.30|経済 (economy) ]

台湾外相が英字紙のインタビューに対し「台湾の次は比が標的。比台防衛協力を」

 台湾外交部(外務省)の呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長は27日、英字紙スターの単独インタビューに対し、「中国が台湾に対する戦争を起こした場合、次の標的は比になる可能性がある」とし「台湾と比は同じ脅威に直面しており、安全保障協力関係を築くことが可能だ」との見解を示した。また海上保安部門、災害対策部門での協力も可能とした。29日のスター電子版が報じた。

 比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用可能施設の増設など、最近の比米防衛協力強化の動きに対して同外相は、歓迎の意を表明。台湾に近いルソン島最北部への米軍利用可能施設が中国への挑発になるとの懸念については「地域で挑発を引き起こしているのは中国の拡張政策だ」と一蹴した。南シナ海を含む地域での航行の自由・上空飛行の自由の権利についても「支持する」と明言した。

 親中と言われた前政権から打って変わって親米路線に回帰したとされるマルコス新政権については、「大統領は地域の平和と安定の重要性を強調し、力による一方的な現状変更に反対を表明しており、これらの台湾にも関連する声明は台湾人に歓迎されている」と高く評価。現政権下で比台関係が「より発展すると見込んでいる」とした。

 ▽中国が災害救援に圧力

 また、2013年に約8千人の死者・行方不明者を出したスーパー台風ヨランダが比を襲った際、「台湾空軍が比に救援物資を送っていたが、中国の圧力で中断を余儀なくされた」ことを明らかにした。

 呉外相は「これは中国が『裏切り者の省』とみなす相手(台湾)に対するハイブリット戦争の一部であり、認知戦の一環だ」と指摘。「中国は台湾に対しサイバー攻撃、偽情報作戦、認知戦といった武力衝突未満の攻撃や経済的威圧を行っている」と訴えた。

 その上で、近年の地政学的状況について「今の状況は米中による覇権争い。われわれはこの争いからは距離を取り、中立でいる必要がある」とし、比をはじめとした東南アジア諸国と一致する立場を示した。

 一方、「台湾統一のためには武力行使も辞さず」と明言する中国の習近平政権に対する台湾の立場としては「台湾は平和的な対話を行う用意がある」と強調しながら、「中国は台湾に1国2制度を受け入れるよう主張しているが、もし香港がそのモデルとなっているなら受け入れようがない」と指摘。「現時点で世論調査の結果が示しているのは、『自治国』として現状維持だ」とした。

 その上で「台湾には選挙によって選出された総統がおり、選挙を通じて構成される議会もある。外務省、国防省もあり、中国でなく台湾自身が統治している。台湾ドルという独自通貨も持っている。したがって中国の一部ではない」と断言した。

 中国の経済的影響力については、「ドゥテルテ政権時代に中国が約束した大型投資はほとんど具体化されていない」と指摘。「過大評価されるべきではない」と述べた。

 各国で主張が対立する南シナ海問題については、「沿岸国同士が平和的に海洋資源や科学的調査に関して共同調査を行うことが最善だ」との立場を示した。

 台湾(中華民国)は、1947年から同海のほとんどを自領域とする「11段線」の主張をしている。それとほぼ同内容の中国による「9段線」の主張が2016年の南シナ海仲裁裁判所判断で全面的に退けられた後も、台湾は立場を変えないと宣言している。(竹下友章)

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