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6月30日のまにら新聞から

現地調達へのVAT免除廃止 日系経済特区企業が混乱

[ 1347字|2021.6.30|経済 (economy) ]

内国歳入庁が輸出型企業の現地調達に対するVATゼロレートの適用を廃止

 内国歳入庁(BIR)はこのほど経済特区入居企業を含む輸出企業による国内企業からの物品やサービスの購入に対する付加価値税(VAT)ゼロ・レートの適用廃止を盛り込んだ新歳入規則(RR9─2021)を発令した。比に進出するPEZA登録企業などにとっては税優遇措置の柱の一つだった一部現地調達へのVAT免税措置が廃止されれば、税務処理やキャッシュフローへの大きな影響が避けられず、企業関係者の間に混乱が広がっている。

 同規則は全国紙ですでに公示されており、27日から発効している。

 新規則によると、納税者のVAT還付申請から90日以内に還付を行える改良VAT還付システムが確立されるなどの条件が満たされたとして、国内サプライヤーからの輸出型企業に対する物品とサービス販売(間接輸出)に対して今後、VAT通常税率(12%)が適用されると定めた。

 新たに通常税率が課される物品販売としては、(1)非居住者である輸入業者に対する売上で、その物品が物品の製造、加工、包装のために使用するため、比国内の輸出業者に出荷されるもの。また支払いは外貨で行われ中央銀行の規則に従うもの(2)輸出販売が年間総生産の70%を超える輸出企業への原材料または梱包材の販売(3)「オムニバス投資法」などの特別法により輸出とみなされるその他の売上。

 また、通常税率対象となる不動産リースを含むサービスとしては、(1)年間総売上の70%を超える輸出をしている企業のための物品の加工、製造に従事する下請け業者の行うサービス提供(2)国外で事業を行っている業者のための、その後輸出される商品の加工、製造または再梱包で、外貨で支払いを受け、中銀の規則に従っているもの──と定めた。

 ▽日比輸出企業が混乱

 首都圏にある大手会計事務所の日本人専門家は、規則の発令以降、「日系企業からの問い合わせがひっきりなしで混乱している」として新規則の影響の大きさを物語る。

 最近、署名された税制改革法第2弾「CREATE」法の施行規則でも登録事業のVAT免税措置が条項に記載されているものの、「事業のために直接的かつ限定的に使用する物品・サービスの国内購入に関して」と不明瞭で、歳入規則との不一致があり日系企業や納入業者の間で不安が高まっているという。

 フィリピン日本人商工会議所の藤井伸夫副会頭は「既存の輸出型企業にも新規則が適用されるのかが懸案。現在、PEZAが内国歳入庁と財務省に詳細を問い合わせている」と述べ、適用範囲が不明との認識を示した。

 「CREATE」法が施行されるが、同副会頭は「日系企業の大半は4年前から税優遇措置を縮小する税制改革法に反対してきたが、VATゼロレートが維持されるのかが最大の関心事だった」と説明。新規則の適用範囲次第で日系企業への影響は深刻となりそうだ。

 一方、29日付ビジネスミラーによると、比輸出業者連合のオルティス・ルイス会頭は内国歳入庁長官に対し書簡を提出し、付加価値税還付申請で業者がケソン市のBIR本庁に直接出向いて申請することを義務づけるなど国内輸出業者や中小の納入業者に負担を課す規則内容に「かなり真剣な関心を寄せている」と慎重な施行を求めた。(澤田公伸)

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