まにら新聞ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
29度-24度
両替レート
1万円=P4,560
$100=P5055

6月9日のまにら新聞から

比成長の最前線を歩く 第1回・変わり始めたフィリピン

オンライン英会話の日系ベンチャー先駆け、レアジョブ社の中村岳・副社長が比経済の最新事情をレポート

[ 1790字|2014.6.9|経済 ]
高層ビルの建設ラッシュが続く首都圏マカティ市

 私がフィリピンと関わりを持ち始めたのは2007年夏、インターネットの無料通信ソフト「スカイプ」を通じたオンライン英会話事業を同級生と始めたことがきっかけだった。

 我々が立ち上げた「レアジョブ」という会社の名前は、自宅から日本人にスカイプを介して英語を教えるという、これまでにない極めて「珍しい(レア)仕事(ジョブ)」を提供することに由来している。今でこそフィリピン人講師によるオンライン英会話は一定の認知度を得て、フィリピンと言えば英語、というイメージも浸透してきたが、私たちが事業を起こした当時、日比をつなぐオンライン英会話サービスを提供していたのは、まだ10社程度しかなかった。

 それが現在では語学留学も盛んになり、オンライン英会話サービスは約150社、語学学校はフィリピン全土で300校以上あると言われる。高い英語能力に、ホスピタリティーにあふれた国民性、新興国の特徴でもある安価な人件費という面も合わさって、フィリピンにおける「英語ビジネス」の盛り上がりは、治安面や貧困といったイメージ一辺倒だったこの国に秘められた魅力や可能性を再発見することにもつながったのではないか。

 7年前、事業の立ち上げと同時に初めてフィリピンを訪れて以来、多くのフィリピン人と出会い、交流し、仕事を共にした。優秀な講師がいれば、積極的に正社員として登用し、そうした新卒中心のメンバーで、日本人駐在員を置かずにマニラ支社は運営してきた。

 日系企業ながらフィリピン人のスタッフ中心で現地法人を経営することは挑戦でもあり、苦労もしたが、彼らのパフォーマンスを見ていると、諸外国と比べてもなんら遜色のない優秀な人材が多いことを実感した。企業としても、今ではフィリピン人スタッフが総勢約170人、講師の数は3千人を超え、毎日約1万レッスンを提供するまで成長した。

 たまたま、自分たちのビジネスを行う最適な環境がこの国にあったことで、私自身が日本とフィリピンを往復する生活を送ることになり、渡航回数も40回を超えた。その過程の中では、日本におけるフィリピンのイメージの変化だけでなく、特にこの数年はマニラで生活していると、至る所で建設中の高層ビルが目に付き、マニラで最も先進的な発展を遂げるタギッグとマカティ両市にまたがる「ザ・フォート」地域など、この国の経済力の高まりを肌で感じることが多くなった。

 7年前のマニラは、まだまだ衣食住で日本人が生活するには十分に満足できない部分も多かった。美味しいラーメンやとんかつが食べたいと思っても、近くに食べにいけるところはなかったが、2014年の今、マニラでは日本と大きく変わらない水準の生活環境が整備されつつある。

 また、フィリピン国内のベンチャー企業の中にも目を引くビジネスやサービスも出てきている。情報技術(IT)など新しい技術を使って社会を変革しようとする起業家精神を持った若い世代の台頭には期待が持てる。日系企業も大手だけでなく、スタートアップと呼ばれる立ち上げ間もない若いベンチャーがフィリピンに拠点を構えたりと、観光だけでなくビジネスの面でも、これまでになかった日比の関係が生まれきているように思う。

 未来に向かって大いなる可能性を秘め、転換期を迎えているフィリピン。この国を拠点に活動する日本のベンチャー企業の経営者として、自分が興味を持ち、実際に足を運んで体験、見聞きしたことを中心に、これから私なりに「フィリピンのイマココ」をレポートしていきたいと思う。(中村岳、続く)

 中村岳さん 1980年生まれ。東京都出身。東大工学部、同大学院情報理工学系研究科卒業。NTTドコモを経て2007年10月、スカイプを使ったフィリピン人講師によるオンライン英会話事業を行うレアジョブ社を立ち上げ、現在は同社代表取締役副社長・最高執行責任者(COO)。

 フィリピンは本格的な経済成長に向けた期待がもたれている。日系企業では中小企業やIT関連を中心としたベンチャーの進出も目立つうえ、日本との航空便も拡大したことで「ヒト・モノ・カネ」の流れが変わってくるとみられる。日本でフィリピンの注目度を高めたオンライン英会話事業の先駆け「レアジョブ」を展開する中村岳さんがフィリピン最新事情を毎月レポートする。(編集部)

経済