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年末検証

第4回 ・ 任期後半に入った大統領。人災、天災相次ぐ中、持続的成長と支持率維持が鍵に

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8月下旬の抗議集会で、大統領の亡父ベニグノ元上院議員の面を掲げてポークバレル全廃を訴える参加者ら

 2010年6月に発足したアキノ政権の折り返し点となった13年。5月の統一選で政権基盤を強化し、「汚職の温床」とされてきた優先開発補助金(PDAF、ポークバレル)にメスを入れようとした矢先、武装グループによるサンボアンガ市街占拠事件とボホール大地震、史上最強とされる台風ヨランダ(30号)被害の対応に追われた。次期大統領選(16年5月)へ向けた離合集散が始まる14年、求心力を維持し「汚職なければ貧困なし」を旗印にした改革を継続するためには、12年第3四半期から5期続いた7%台の国内総生産(GDP)成長率と70%前後の高支持率を保持して、2年半後の政権奪取を狙う野党勢の揺さぶりを抑え込む必要がある。

 占拠事件の舞台となったのは、ミンダナオ地方南西部の拠点都市サンボアンガ市。9月9日未明、イスラム武装勢力のモロ民族解放戦線(MNLF)構成員約300人が市役所周辺の地区を占拠し、200人以上の住民を人質に取って「フィリピンからの分離・独立」を訴え始めた。包囲網を敷いた軍・警察との市街戦は約3週間続き、民間人9人を含む137人が死亡、251人が負傷した。MNLFによる放火も連日のように続き、商店や家屋1万棟強が全半焼し、市中心部は大打撃を受けた。

 約40年前、MNLFから分派したモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉が現政権下で進み、「ミンダナオ和平」への期待が膨らむ中で起きた今回の事件。有力英字紙インクワイアラーは社説で「急成長する域内他国に追いつくため、アキノ政権が取り組んできた努力が、事件により水泡に帰す可能性がある。資源が豊富なミンダナオ島への投資呼び込みは確実に後退するだろう」と影響の大きさを指摘した。

 占拠事件の被災住民約12万人の支援、市街地復興策に、政府が乗り出そうとした直後の10月20日には、セブ州に近いビサヤ地方ボホール州でマグニチュード7・2の地震が発生し、少なくとも222人が死亡した。被災者は、両州など6州66市町で322万人に上り、家屋7万戸や道路・橋も被害を受けた。インフラへの被害総額は22億6千万ペソを超えるとみられる。

 追い打ちをかけるように、台風ヨランダがレイテ、サマール、セブ各州などを横断したのは11月8日。被害額は社会インフラや家屋だけで183億ペソ。経済活動の長期停滞や農作物被害による損失は、14年政府予算(総額2兆2646億ペソ)の3割弱、6千億ペソを超えるとの予想もあり、プリシマ財務長官ら経済関係閣僚は被災直後、「13年第4四半期の成長率は4・1〜5・9%に減速するだろう。年率では最大で1%程度、押し下げられる可能性がある」との見通しを示した。

 経済的影響に加えて、懸念されるのは、汚職対策などアキノ政権の改革を下支えしてきた大統領支持率の低下だ。現政権はこれまで、大統領の高支持率と上・下両院の与党支配を背景に、アロヨ前政権下の不正追及や最高裁長官弾劾に大なたを振るってきた。大統領の任期後半に入った8月からは、歴代政権下で放置されてきた国会議員向け補助金の巨額流用問題にもメスを入れ始めたが、9月以降に相次いだ人災と天災の対応に追われ、追及の歩が鈍った。

 このような状況下で迎える14年は、補助金不正流用事件に関与したとされる国会議員らの訴追が、年明け早々の焦点となる。野党陣営からの次期正・副大統領選出馬が取り沙汰されるレビリヤ、ジンゴイ・エストラダ両上院議員や野党重鎮のエンリレ上院野党院内総務も起訴対象になっており、法廷という場を借りた政治的駆け引きが本格化しそうだ。(酒井善彦、おわり)

(2013.12.31)

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