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年末検証

第3回 ・ 比日経済連携協定に基づく看護・介護士派遣で問われる外国人就労に対する日本の本気度

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来年5月の来日に向けすでに第6陣の日本語研修が始まった=11月19日、首都圏タギッグ市の技術教育技能開発局(TESDA)で写す

 2009年から始まった比日経済連携協定(EPA)に基づく比人看護師・介護福祉士候補者の派遣は、13年で第1陣の渡日から5年が経過した。看護・介護ともに、募集・選考から渡日、病院・施設で働きながらの勉強、国家試験受験、正規就労あるいは帰国という一連の流れが一巡りし、問題の指摘と改善が繰り返されてきた。しかし求人数、合格者は伸び悩んだまま、2014年5月には6陣が渡日し、7陣の募集準備が始まる。

 これまでの入国者数は、5年間で看護師302人、介護福祉士482人の計784人。当初09、10両年の受け入れ最大枠に設定した千人を大きく下回る。

 入国者の少なさは、日本側の求人数の少なさによるところが大きい。国家試験合格の難しさに加え、候補者が家族の事情で帰国したり、第三国での就労機会を得るなど、日本に定着する難しさを施設側が感じているためだ。候補者1人当たり約60万円の費用が必要で、経済的な負担の大きさからも手を挙げにくい。

 1陣から毎年比人候補者を受け入れている神奈川県の特別養護老人ホームによると、100床を超える施設でないと、経営規模的に受け入れは難しいという。日本の介護施設の大半は50床規模。人材不足の補完にはならない。

 国家試験を受験した1〜3陣のうち、合格者は看護師25人、介護士43人。その中のそれぞれ3人、6人が帰国を決断した。不合格で、1年の滞在延長措置による再挑戦を勧める施設の申し出を断り、帰国した人も多い。候補者にとって日本は、サウジアラビア、米国、カナダなど、数ある選択肢の一つにすぎないという状況は変わらない。

 候補者の調査を続けている静岡県立大の高畑幸准教授は、「合格後は滞在期限の実質的無期延長と家族の呼び寄せができるというメリットを候補者にもっとアピールする必要がある」と呼び掛ける。

 日本の医療・福祉施設で就労を目指す外国人の教育を支援し、提言活動を行っている特定非営利活動法人、AHPネットワークスの二文字屋修さんは、EPAでは候補者が将来設計を立てにくいと指摘。

 「日本で看護師になっても希望する診療部署に自由に移れない。介護福祉士の資格を取得しても無資格者と業務内容にさほど違いはなく、給与が格段上がるわけでもない。帰国後に重宝される資格でもない。将来への不安が残る」

 施設や民間団体からは、日本の看護大学や専門学校による比現地校の設立や、比日の大学間で協定を結び、一定期間日本に留学して国家試験を取得するなど、勉強と就労の分離を提案する声が上がっている。閉鎖的な入管制度の見直しを求める意見も多い。

 一方で、EPAを通さず、直接、国家試験を受験して資格を取得した中国人看護師や、日本人と結婚し、永住権を持つ比人女性がホームヘルパーや介護福祉士の資格を取得して働いている例、日本国籍を持つ日系人と外国籍の親が施設で働くケースは年々確実に増えている。

 厚労省によると、日本は団塊世代が75歳以上になる2025年までに、現在149万人の介護人材を237〜249万人に増やす必要がある。就労人口の減少も予想される中、看護・介護での外国人の就労が注目され、EPAは試金石として盛んに報道された。しかし日本政府は、制度は国内の労働力不足を補う目的ではないと言明している。

 二文字屋さんは、EPAの意義と方法に民間の経験と経済性を取り入れる時期に入ったのではないかと問い掛ける。「問題は方法論よりも(日本政府の)外国人労働に対する本気度が薄いことにある。それをすべて日本語能力の議論に集約させているのがとても気になる」。日本は外国人の力を積極的に借りるのか、そうでないのか。明確な方針と覚悟が問われている。(大矢南)

(2013.12.30)

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