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シリーズ・連載

年末検証

第1回 ・ トゥバタハ岩礁座礁事故、来年夏に新詰め所建設が始まる予定。サンゴ礁に残る傷跡

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中国漁船の座礁で傷ついたサンゴ礁=被害調査を実施した専門家提供

 現職議員も巻き込んだ国会議員向け開発補助金(通称ポークバレル)の不正流用問題や、比日経済連携協定(EPA)に基づく比人看護師・介護福祉士候補者派遣など、2013年のニュースを4回にわたり検証する。

 ルソン地方パラワン州プエルトプリンセサ市の南東沖約150キロに位置する、世界遺産のスルー海トゥバタハ岩礁。1993年12月の世界遺産登録から20周年となった今年、この岩礁で米海軍の掃海艦「ガーディアン」と中国漁船による座礁事故が相次ぎ、計6247平方メートルに及ぶサンゴ礁が傷ついた。事故後、周辺海域の監視強化の重要性が指摘され、岩礁の自然公園管理事務所と世界自然保護基金(WWF)フィリピン支部は、監視員詰め所の改修を呼び掛け始めた。WWFによると、12月現在、資金約5千万ペソが集まった。来年には新たな詰め所の建設が始まる予定だ。

 管理事務所とWWFは事故後から、定期的にサンゴの被害調査を実施してきた。10月に実施した調査結果によると、米海軍の掃海艦による被害は回復の兆しが見られるが、中国船による被害は深刻で、いまだ海上からも被害がはっきりと目視できる状態だという。

 一連の座礁事故では、大きなサンゴが真っ二つに割られたり、浅瀬のサンゴが根こそぎはがされたりした。2つの事故で船が座礁していた期間はたった約3カ月間だったが、サンゴが自然に回復を始めるのは、その約200倍の約50年とされている。しかし、被害調査に参加している専門家は「地球にとってみれば、50年なんてちっぽけな期間」と楽観的に話している。

 現在の監視員詰め所は岩礁の北部に設置されている。しかし、トゥバタハ岩礁自然公園法(共和国法10067号、2010年4月成立)で指定された広大な保護範囲約9万7030ヘクタールを監視するには十分とはいえない状態だ。

 監視レーダーの24時間稼働に必要な電力が確保されていないほか、監視員用ボートは詰め所から約300メートル離れた位置に停船している。詰め所には監視員が拘束した密漁者を留置する施設すらない。

 これら問題を解決するため、新詰め所は太陽光発電のソーラーパネルが現行の2枚から60枚に増築されるほか、留置部屋やボート係留所が建設される。土を必要としない「水耕栽培」の技術を使って野菜を栽培、監視員の栄養不足解消も予定されている。

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によると、トゥバタハ岩礁付近の海域には、350種以上のサンゴ礁と、450種以上の魚が生息しているとされ、希少種の貴重な生息地となっている。世界有数のダイビングスポットとして知られ、季節風が弱まる毎年3月から6月には、国内外のダイバーが集まる。

 一方で、環礁の生物を狙った夜間の密漁が後を絶たない。今年座礁した中国船からも「ワシントン条約」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で国際取引が規制されている希少動物「センザンコウ」が見つかった。

 岩礁の管理事務所によると、06年3月から現在まで、密漁者450人の身柄が拘束されてきた。今回の座礁時に拘束された中国人船員12人は、現在もパラワン州の拘置施設に収監されている。管理事務所関係者は密漁防止につながるとして、新詰め所の早期完成に期待を寄せている。(鈴木貫太郎)

(2013.12.28)

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